インサイドオブドレス
「てめーは結局どっち、だ?」
鏡に映った其の姿に吐き気を催し、一つ、咳払い。
駆け巡るのはどろりとした朦気な記憶らしきもの。
其の記憶は自分のものだ、と思いたくなかった。
「アッハハ、綺麗綺麗可愛い可愛い」
スカートの裾を抓んで無造作に捲し上げる。
映ったのはどちらでも無い、其れ。
元に戻して映る全体に目をやって、一つ、呼吸。
(知るかよ、俺はどっちでもねーよ、なあ? どっちか知ってりゃ苦労はしねーっての、アハハ)
ドアを開けて外に出て街往く人の様子を伺う。
誰も気になんて留めないんだ、ああ前からそうだった。
存在しない違和感を喜ぶべき?悲しむべき?
こうすればきっと解らないだろうから、と選んだ其の方法。
ああアイツはどんな顔するんだろうなんて、愉しもうとしてる己に気付き。
さっきとは違うドアに手を掛けて、又一つ、呼吸。
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