不明瞭な感覚

どうして愛しいかと言う問いに、私は答えられない。
どれだけ愛しいかと言う問いに、私は答えられない。
其の感覚が何色をしていて何角形なのかを理解出来ないから。
其の感覚が何処から来て何処へ行くのかを理解出来ないから。


解らなくて頭を捻って考えるのに、何も解らない。
貴方が何て思うかとか、何て言うかとか、そう言う話では無くて。
自分が何て思うかとか、何て言うかとか、そう言う話。
解らなくて、情けなくなって、窓の外を見て、何も考えない様に音楽を沢山流して。
身体中の全部の感覚が鈍って来た所で、ふいに貴方が視界に入った。
どうして愛しいのだろうか、どれだけ愛しいのだろうか。
柄にも無く貴方が少し笑って、私は我に返った。
何も考えて無いのに、手が勝手に動いて、貴方の頭を撫でていて。
貴方は一瞬顔を曇らせたけど、小さく鼻で笑って目を閉じた。


ああ、私はこんなに貴方を見ていたのか。
そう気付いて、もう一度貴方を撫でた。
どうしてとか、どれだけとか、関係のない事なのだろうか。
自分の手の動きがとても馴染みで、自分に面食らう。
考えなくても良いか、と私は笑った。

Back